Will動物病院グループ

免疫の話4

新年明けましておめでとうございます。
今年は申年、我々人間の仲間の年となります。木から木に飛び移るその機敏性に習い、飛躍が出来るように努力したいと思います。

さて、コラムは免疫と貧血の関係についての4回目です。
これまで沢山難しい言葉を使いましたので、最後にまとめて記載しておきます。
では、AID(炎症に起因する貧血)と呼ばれる貧血症の原因は何でしょうか、代表的な病気は猫のエイズ・白血病、慢性腎炎、犬の慢性型リンパ腫などがあげられます。

これらの病気では典型的な症状を示す前から貧血が出る症例の多くは予後が悪い事が多いとされています。
貧血の原因は様々です。事故や手術などによる出血はきちんと処置をして鉄を含んだ食事を摂れば治ります。
癌などの非常に重篤な疾患で起こる血球貪食症候群はもう手の施しようがありません。
自己免疫の暴走による貧血は治療効果が上がってきています。
それに対して何らかの炎症があり、これによりヘプシジンが増加して造血機能にブレーキがかかるAIDのような貧血は典型的な症状が出ていない症例も多く、たまたま検診などで見つかることも多く、初動検査が重要となります。

【用語まとめ】
○マクロファージ
細胞性免疫の主役、異物(細菌など)と認識するとなんでも食べて、分解してしまう。マクロファージには様々な名前や形態があり、血中では単球、肝臓や脾臓内では細網内皮系細胞、異物を食べている時にはマクロファージと呼ばれる。

○血球成分
酸素を運ぶ赤血球、免疫に関係した白血球、血小板。
白血球は5タイプ(好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球)に分類され、単球(たんきゅう)はマクロファージと同様な細胞です。

○ヘモグロビン
赤血球の本体、鉄+蛋白質からなる。古くなった赤血球は肝臓や脾臓にある細網内皮系で分解され、鉄は再利用。蛋白質はビリルビンとなり胆汁 から腸管に排出される。細網内皮もマクロファージの一族。

○フェロポーチン
マクロファージで分離された鉄をマクロファージ内から血中に出す働きをする。フェロポーチンがないと鉄はそのままマクロファージ内に保管される。

○トランスフェリン
血中で鉄を運ぶ運搬屋さん。

○エリスロポエチン
腎臓から分泌される造血指示物質。

○ヘプシジン
造血にブレーキをかける物質、炎症により誘引された免疫細胞が分泌するインターロイキン6(サイトカイン)により増加してAID状態を作る。

サイトカインは免疫細胞が分泌する物質の総称。

文責 千葉 剛