今回は免疫が関与する動物達の貧血です。
代表的な病気にその名も「免疫介在性溶血性貧血」があります。免疫システムが間違って自分自身である赤血球を攻撃、破壊してしまう病気です。過去には生存率が60%前後程の病気でしたが、早期の輸血と商品名「ガンマーガード」というお薬により症例、症例で紆余曲折はありますが治癒率はあがりました。
同様の病気に「免疫介在性血小板減少症」があります。
血球貪食症候群
前回お話したマクロファージが血球成分である赤血球、血小板、顆粒球(➡注1)を食べてしまう現象です。
そもそも免疫の基本は「自己と他者」を分けて、他者=異物として攻撃することが基本です。
このことから、癌は元々自己が異常繁殖したものだから、免疫は見過ごすとさえ言われた時期がありました。こちらについては自然免疫ナチュラルキラー細胞の存在が判明してからは否定されました。
血球貪食症候群では自分自身である血液成分マクロファージがまとめて攻撃=食べてしまうわけですから、堪りません。一気に貧血が進行、輸血も間に合わない状況になってしまいます。
この病態は突然起こるのではなく重い病気の末期に発症することが知られています。癌などのどうしようもない病気の末期にマクロファージが見境なく攻撃する現象だったのです。ステロイド、化学療法、免疫抑制剤などが使われますが、効果は期待できません。
(注1) 顆粒球
血液は水分及び血球成分に大別される。さらに血球成分は赤血球と白血球、血小板と分けられ、白血球自体はリンパ球、好中球(こうちゅうきゅう)、好酸球(こうさんきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)、単球(たんきゅう)に分類される。好中球、好酸球、好塩基球を総称して顆粒球と呼ぶ。
文責 千葉 剛