Will動物病院グループ

免疫の話 3

免疫が関与する貧血の三回です。

前回までに免疫の分類として、細胞免疫(→マクロファージが主役)、液性免疫(→抗体)、自然免疫(→NK細胞)があること。免疫の暴走により、免疫介在性溶血性貧血や血球貪食症候群などの恐ろしい病気になることをお話してきました。

今回は「なんか貧血してるけど。鉄剤やサプリメントを与えても改善しない」場合に説明される第3の貧血、AID(炎症に起因する貧血)についてのお話になります。

このお話は赤血球の一生と密接な関係がありますので、最初に赤血球の成り立ちから始めます。

赤血球は骨髄や肝臓で作られます。赤血球自体は2つの成分、鉄+蛋白質から成り立っています。寿命は元気な時で100~120日、栄養状態などが悪い状態で70日位と言われています。寿命となった赤血球は脾臓や肝臓にある細網内皮系細胞(➡マクロファージの一族)で鉄と蛋白質に分けられ、鉄は再利用。蛋白質は肝臓でビリルビンになり胆汁として腸管に排出されます。このビリルビンが上手く排出されなかったり、異常に作られた状態が黄疸となります。

鉄の再利用の仕組みが少々ややこしくなっています。

マクロファージ(細網内皮系)で分解された鉄は

フェロポーチンによってマクロファージ内から血中に排出されます。フェロポーチンが働かなければ、そのままの状態で蓄えられることになりり、赤血球はつくられません。

次に活躍するのがトランスフェリンという運搬屋さんです。実は鉄という物質は非常に危険な奴で、そのまま血中をふらふらして適当に器官に付くとその器官を傷つけてしまいます。トランスフェリンと結合して初めて安全となり、骨髄などに運ばれるわけです。

造血の指示は腎臓から分泌されるエリスロポエチンです。そして抑制指示は肝臓から分泌されるヘプシジンになります。

炎症が起こるとこのヘプシジンが沢山作られてしまいます。このシステムがAID(炎症に起因する貧血)の発症メカニズムになります。次回はAIDについてお話します。

文責 千葉 剛