Will動物病院グループ

野生に帰れるのだろうか?シリーズ2

プチ明るい野生動物の話の2回目です。
野生動物というと人間に慣れにくというイメージがありますが、キツネ以外はかなりフレンドリーになります。
適者生存の鉄則を地でいく感じです。
問題はそこから始まります。飼育担当者が名前を付けるわけです。
人は何物にも名前を付ける生き物なのです。
病名を付け、病気の進行具合(ステージ分類)に名前を付け、結果同じ病気なのに何通りもの呼び名がある病気が出現したりします。こう言うのは大抵、重い病気に決まっているのですが。

さて、野生動物を飼育して名前が付くとこの時点で野生動物ではなくなります。愛玩動物となるわけです。
こうなると野生動物保護センターから野生動物愛玩センターになってしまいます。
何故?愛玩センターではいけないのか、野生動物保護センターの使命は野生動物が最低限の人間の関与で生きていく環境を「保護=守る」する事にあります。
人間が沢山手をかけて野生復帰させたとして、それで万事OKとはいかない症例が沢山あります。
例えば、タヌキに疥癬(カイセン)という皮膚寄生虫病があります。疥癬は獣医師にとっては馴染みの病気ですし、治療はさほど難しいことではありません。
イベルメックチンという薬で完治します。ところが特効薬のイベルメックチンを野生のタヌキに反復投与しているうちに耐性の疥癬が出現、この症例を不完全な治療中に野生復帰させてしまい、結果この地区のタヌキに耐性疥癬をバラまく結果になってしまいました。
ではホントに最低限の治療だけをしていたらどうなるのか、今度はマスコミに叩かれてしまいます。

文責 千葉 剛